中枢中核都市の可能性

明治維新から150年が経ち、いま日本は、集権型国家から分権型国家へと舵を切るかどうかのとば口に立っている。数年前から感じている問題意識が、ようやく広く浸透し始め、中央政府の中にも本腰を入れる動きが現れてきた。幕藩体制から西郷や大久保が生まれたように、霞が関からそうした人材が生まれても不思議はないと思う。
中枢中核都市の可能性
今週「中枢中核都市」という新たな制度の創設が決まった。東京一極集中を是正して地域の経済や住民生活の拠点をつくることを目指し、首都圏を除く43道府県の政令指定都市・県庁所在地・それに準ずる都市、あわせて82市が選定された。この中には、僕が暮らす松本市も含まれている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO3922015020122018L83000/
明治4年から数年間に及んだ廃藩置県によって、日本では、国の下に都道府県があり、都道府県の下に市町村があるという3層の行政機構が築かれた。これが基本的には現在も続いているわけだが、戦後、人口の増加や偏在を踏まえて特例的な制度が設けられてきた。一般に知られているのは、大都市に都道府県と同等の権限を付与する「政令指定都市」だ。概ね人口100万以上とされてきた要件が人口50万以上に緩和され、現在は20市を数えている。

その他、一般市以上&政令指定都市未満の制度として、1996年に人口30万以上の「中核市」、2000年に人口20万以上の「特例市」が導入された。両者の差は、民生と保健衛生の権限とされるが、いずれも都道府県から委譲される権限は一部に限られたこともあり、馴染みは薄い。2015年には「中核市」の要件が人口20万に緩和され、「特例市」は廃止となる。人口24万で「特例市」だった松本市は、従来の権限を維持して今に至っている。
中枢中核都市の可能性
政府が「中枢中核都市」の選定を発表した翌々日、松本市は、他都市から数年遅れて動き出した「中核市」移行について、市議会に取り組み状況を報告した。菅谷市長は、2021年に「中核市」となり、20数人の獣医師の人件費を負担しても市独自で保健所をつくることの意義を力説した。一方で、「中枢中核都市」に関して見解を問われた担当部長は、「同様の権限が与えられるような報道の内容でありますが、具体的な情報が来ていませんので・・・」と言葉を濁した。東京と地方の差は、情報力とスピード力の差であることを痛感する。

「中枢中核都市」に期待されているのは、周辺の市町村を含めた<圏域>の活性化だ。まだ制度の詳細は不透明だが、自前の保健所を持つことを除けば、松本市が周回遅れで「中核市」を目指す大義はなくなったのではないだろうか。
中枢中核都市の可能性
松本市民は、廃藩置県以来、県庁所在地の争いで敗れた長野市に対抗意識を持ち、信州の中心に位置することを誇りとしてきた。そのプライドは、人口減少社会に即した分権型国家を築いていく時代に、再び輝きを取り戻すことができると思う。「中枢中核都市」を、松本平の中枢にふさわしい都市を創る起爆剤にしたい。

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