2016.6.7
ベーシックインカムという考え方
ヘ参議院選挙を前に消費税率の引き上げが再延期されたことで、超少子高齢化時代の社会保障が、 改めて問われています。そうした中、スイスでは「ベイシックインカム」という社会保障の制度を 導入するかどうかの国民投票が行われました。反対が4分の3を超えて否決されたものの、ヨー ロッパでは、なお導入に向けた動きが続いています。「ベイシックインカム」とは、どのような ものなのか。
「ベイシックインカム」は、全国民に最低減の所得を保障するため、政府が一律に一定額の現金 を無条件で配る政策です。導入されれば、年金や生活保護や失業保険といった従来の社会保障の 制度は廃止されます。日本では、前々回の衆議院選挙で当時の日本維新の会がこうした考え方を 公約に掲げましたが、古くから議論されてきたヨーロッパでも、実現には至っていません。
導入を目指す人たちは、どのような意義やメリットがあると考えているのでしょうか。 根底にあるのは、ロボットや人工知能の開発が進めば、仕事や労働をめぐる環境が根底から覆り、 大勢の人が仕事を失うリスクに直面するようになる、そうした状況を見越して、時には働けなく ても暮らしていける、新たな仕事に就くまで時間的な余裕を持てる、広範なセーフティーネットを つくる必要がある、という問題意識です。 そうした前提に立つと、膨大な行政コストをかけて所得や資産で支給の有無や金額を調整する、 いまの生活保護や失業保険の制度では対応できない、すでに限界が表れているというわけです。 そして、全国民に一律に一定額の現金を無条件で配る「ベーシックインカム」は、失業すること が特別なことではない社会で新しい仕事や価値を生み出していくという「社会変革」の意義や、 役人の裁量や複雑な手続きをなくすことで行政の大幅なスリム化が図れるという「行政改革」の メリットがあるとしています。
これに対し、反対する人たちは、様々な角度から問題点を指摘しています。 第1は、働かなくても自動的に生活できる所得を手にできるようになれば、働く意欲が失われて しまう、という懸念です。逆に、所得の高い人にも低い人にも同じ金額を配るなんて不公平だ、 究極のバラマキではないか、という批判もあります。さらに、多岐にわたる制度を組み合わせて 成り立ってきた社会保障が、単純な現金のやりとりに置き換えられるわけがない、という指摘も あります。そして、そもそも膨大な財源が必要で、超少子高齢化時代に実現不可能だ、というわけ です。
どの程度の金額が適当と考えるかは、自由競争を重視する立場と再分配を重視する立場で異なり、 財源と給付のバランスを見ながら社会が決めることだと思いますが、国民投票が行われたスイス では、毎月約27万円支給されるという案が4分の3以上の反対で否決されました。 フィンランドやオランダでは、「ベーシックインカム」を一部の国民や自治体を対象に試験的に 導入して、効果や課題を検証することになっています。
参院選「社会保障を重視」53% 朝日連続世論調査:朝日新聞デジタル
日本では、消費税率の10%引き上げが再延期され、4年前に決めた「社会保障と税の一体改革」 が事実上棚上げになりました。そうした中で、国民の多くは、超少子高齢化時代の社会保障政策 がどうなっていくのかに強い関心を寄せています。 「ベーシックインカム」の考え方は、IT社会がもたらす仕事や雇用の変化、超少子高齢化に伴う 世代間格差、社会保障行政の仕組みなどについて、根本から考え直す契機になり得るものです。 これを1つの補助線として、日々の暮らしと将来の見通しの両方に目を向けた骨太な社会保障の 議論をしていくことが望まれます。
「ベイシックインカム」は、全国民に最低減の所得を保障するため、政府が一律に一定額の現金 を無条件で配る政策です。導入されれば、年金や生活保護や失業保険といった従来の社会保障の 制度は廃止されます。日本では、前々回の衆議院選挙で当時の日本維新の会がこうした考え方を 公約に掲げましたが、古くから議論されてきたヨーロッパでも、実現には至っていません。
導入を目指す人たちは、どのような意義やメリットがあると考えているのでしょうか。 根底にあるのは、ロボットや人工知能の開発が進めば、仕事や労働をめぐる環境が根底から覆り、 大勢の人が仕事を失うリスクに直面するようになる、そうした状況を見越して、時には働けなく ても暮らしていける、新たな仕事に就くまで時間的な余裕を持てる、広範なセーフティーネットを つくる必要がある、という問題意識です。 そうした前提に立つと、膨大な行政コストをかけて所得や資産で支給の有無や金額を調整する、 いまの生活保護や失業保険の制度では対応できない、すでに限界が表れているというわけです。 そして、全国民に一律に一定額の現金を無条件で配る「ベーシックインカム」は、失業すること が特別なことではない社会で新しい仕事や価値を生み出していくという「社会変革」の意義や、 役人の裁量や複雑な手続きをなくすことで行政の大幅なスリム化が図れるという「行政改革」の メリットがあるとしています。
これに対し、反対する人たちは、様々な角度から問題点を指摘しています。 第1は、働かなくても自動的に生活できる所得を手にできるようになれば、働く意欲が失われて しまう、という懸念です。逆に、所得の高い人にも低い人にも同じ金額を配るなんて不公平だ、 究極のバラマキではないか、という批判もあります。さらに、多岐にわたる制度を組み合わせて 成り立ってきた社会保障が、単純な現金のやりとりに置き換えられるわけがない、という指摘も あります。そして、そもそも膨大な財源が必要で、超少子高齢化時代に実現不可能だ、というわけ です。
どの程度の金額が適当と考えるかは、自由競争を重視する立場と再分配を重視する立場で異なり、 財源と給付のバランスを見ながら社会が決めることだと思いますが、国民投票が行われたスイス では、毎月約27万円支給されるという案が4分の3以上の反対で否決されました。 フィンランドやオランダでは、「ベーシックインカム」を一部の国民や自治体を対象に試験的に 導入して、効果や課題を検証することになっています。
参院選「社会保障を重視」53% 朝日連続世論調査:朝日新聞デジタル
日本では、消費税率の10%引き上げが再延期され、4年前に決めた「社会保障と税の一体改革」 が事実上棚上げになりました。そうした中で、国民の多くは、超少子高齢化時代の社会保障政策 がどうなっていくのかに強い関心を寄せています。 「ベーシックインカム」の考え方は、IT社会がもたらす仕事や雇用の変化、超少子高齢化に伴う 世代間格差、社会保障行政の仕組みなどについて、根本から考え直す契機になり得るものです。 これを1つの補助線として、日々の暮らしと将来の見通しの両方に目を向けた骨太な社会保障の 議論をしていくことが望まれます。